再生手続き開始の申し立ての準備
■再生手続の申し立て要件
再生手続における申し立て要件は、「破産の原因たる事実の生ずる恐れがあるとき」または「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない場合」であり(法21条)、従来の和議手続等に比べるとかなり緩やかな要件になっています。これは、再生手続による事業再建をより実効性のあるものとするために、資金繰り等で窮地に陥り経営が破綻する前に申し立てができるようにしたものです。
■再生手続の対象となる者
民事再生法は、個人およびすべての法人を手続きの対象としています。法人の場合には会社更生法の対象となる株式会社に限られず、学校法人・医療法人なども利用できます。また、個人は事業者・非事業者を問いません(法1条)。外国人、外国法人も、再生手続に関しては日本人または日本法人と同一の地位とみなされます(法3条)。
ところで、事例のような中小企業は、ほとんどの場合代表者が金融機関からの借入金について個人保証をしています。本文では事案が複雑になるため触れませんでしたが、代表者個人の再生手続の申し立ても検討する必要があります。
■再生手続の申立権者
再生手続の申立権者は、原則として再生債務者自身ですが、「破産原因の生ずる恐れがあるとき」は、債権者も申し立てをすることができます(法21条)。債権者が申し立てをする場合には、債権の存在を証明しなければなりません。
法人が申し立てを行う場合、理事・取締役の全員一致は要求されていません。通常の取締役会の決議で足ります。法人の理事およびこれに準ずる者(会社の場合は清算人)が、他の法律によって破産または特別清算の申し立てをしなければならない場合は、単独で再生手続の申し立てをすることができます(法22条)。なお、会社更生法とは異なり、再生債務者が株式会社であっても株主には再生手続の申立権はありません。
■裁判所の管轄
再生事件の審理を行う裁判所は、専属管轄(法律で定められた裁判所以外には申し立てが出来ないこと)となっています。原則として、主たる営業所の所在地、外国に主たる営業所があるときは日本における主たる営業所の所在地、営業所がないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄裁判所となります(法5条)。従って、法人であれば、原則として法人の本店所在地を管轄する地方裁判所に再生手続を申し立てること、となります。
ただし、民事再生法は再生事件の処理に柔軟に対応するため、親子会社および法人とその代表者個人に関しては、一方について既に再生手続の申し立てがなされている場合は、他方も当該裁判所に申し立てができるとしています(法7条)。
■予納金
そこにはどのように多くのbillionares世界ではありますか?
再生手続開始の申し立てにあたっては、裁判所が定める金額を予納しなければなりません(法24条)。予納金は、公告送達費用や監督委員の報酬などに充てられるものです。東京地方裁判所における再生手続予納金基準は次の通りです。
負債総額 | 予納金額 |
---|---|
5000万円未満 | 200万円 |
5000万円〜1億円未満 | 300万円 |
1億円〜10億円未満 | 500万円 |
10億円〜50億円未満 | 600万円 |
50億円〜100億円未満 | 700万円 |
100億円〜250億円未満 | 900万円 |
250億円〜500億円未満 | 1000万円 |
500億円〜1000億円未満 | 1200万円 |
1000億円以上 | 1300万円 |
予納金は申立時に一括納付することが原則ですが、東京地方裁判所では事情によって、申立時に6割相当額を、申し立てから2カ月以内に4割相当額を分割して予納することも認めています。再生の可能性はあるが、当座の資金に窮している再生債務者の状況に配慮した取り扱いといえます。また、再生債務者である会社とともに関連会社が再生手続の申し立てを行った場合には、原則として1件あたりの予納金を50万円とし、会社の代表者個人も併せて再生手続の申し立てを行った場合には、原則として1件あたりの予納金を25万円とする運用も行われています。
■弁護士費用
再生債務者の代理人として再生手続の申し立てを行い、手続き開始後も事実上再生債務者に代わって手続きを主導する弁護士の費用は、弁護士会の報酬規程によれば、事業者の再生手続に関する報酬は次の3種類です。具体的金額や支払方法については、依頼者との協議によって定められることになります。
(1)着手金
「資本金、資産および負債の額並びに事件処理に要する執務量」に応じて 支払われる手数料(100万円以上)。
(2)執務報酬
開始決定から再生手続が終了するまでの執務の対価として、執務量および 既に受けている考手金および報酬金の額を考慮の上で、月額で定める報酬
(3)報酬金
「弁済額、免除債権額、延払いによる利益および企業継続による利益等を考慮して」定める委任目的達成時に支払う報酬金
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再生手続き開始前の保全処分
民事再生法では、申し立ての後、再生手続開始が決定されるまでの間、再生債務者の財産の散逸を防ぎ、債権者の権利行使を制限するための手続きが設けられています。従来の和議手続にも保全処分はありましたが、和議開始決定前における申し立ての取下げが自由であったため、申立人が保全処分発令後に申し立てを取下げるという「保全処分の食い逃げ」といわれる事例がありました。そこで、民事再生法では、以下の保全的措置がなされた場合は、裁判所の許可がなければ再生手続開始の申し立てを取下げることができないとして、濫用の防止を図る一方で、これらの制度を機動的に活用できるようにしました(法32条)。
■他の手続きの中止命令(法26条)
裁判所は、再生手続申し立ての後、再生手続開始決定までの間、必要があると判断したときは、会社更生手続以外の他の倒産手続、強制執行、仮差押え、仮処分および再生債務者の財産関係の訴訟手続などの中止を命ずることができます。ただし、既になされている強制執行、仮差押え、仮処分の中止命令は、再生債権者に不当な損害が及ばない場合に限られています。
■強制執行等の包括的禁止命令(法27条)
裁判所は、再生手続申し立て後、再生手続開始決定までの間、個別の中止命令や保全処分では再生手続の目的を十分達成できない恐れがあると認められる特別の事情があるときは、すべての再生債権者に対し、再生債務者の財産に対する権利行使を包括的に禁止することができます。申し立てにより自動的に再生債権者の権利行使を制限する自動停止制度(オートマティックスティ)の導入はなされませんでしたが、その代わりに採用されたものです。この制度は、全国に財産が散在するような場合に利用されるものです。ただし、現在の再生手続の運用では、申し立てから2週間程度で開始決定がなされますので、包括的禁止命令を発令しなければならない事案は限られたものになると考えられます。
■仮差押え、仮処分その他の保全処分(法30条)
裁判所は、申し立ての後、再生手続開始決定までの間、再生債務者の業務および財産に関し、仮差押え、仮処分その他必要な保全処分を命じることができます。現在の運用は、申し立て後直ちに弁済禁止の保全処分が発令されることが原則となっています。
■担保権の実行としての競売手続の中止命令(法31条)
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民事再生法は、担保権については別除権として、再生手続によらないで権利行使できるとしました(法53条)。しかし、再生債権者の一般の利益に適合し、かつ競売申立人に不当な損害を及ぼす恐れがないときは、相当の期間を定めて担保権の実行としての競売手続の中止を命ずることができるという制度を設けました。担保権の実行としての競売中止命令は、再生手続開始決定までの間だけではなく、再生手続開始決定後も申し立てをすることができます。担保権は、別除権であるため再生手続開始決定によって自動的に中止にならないためです。
民事再生手続きのバリエーション
■再生手続のバリエーション
(1)通常の再生手続
通常の再生手続は、間口の広い、事案の特性に応じた弾力的対応ができるよう手続きにいくつかのバリエーションを設けています。大きく分けて、次の4種類に分類できます。
@完全DI P型 … 再生債務者自身が、再建のために事業を継続し手続きを追行する再生手続のプロトタイプです。
A監督型 … DI P型の変形で、「監督命令」により監督委員の監督を受けるパターンです。
B管理型 … 「管理命令」によって、再生債務者の経営権限は奪われ、管財人(保全管理人)によって再建が図られるパターンです。
C簡易型 … 機関によって分類する上の3パターンとは切り口が違いますが、手続き進行の特殊なものとして債権調査・確定手続を省略する「簡易再生」、および 「同意再生」のパターンがあります。
(2)個人債務者の再生手続
個人の債務者のうち、負債総額が多額でない者については、通常の再生手続の特別として、平成13年4月から次の手続きが施行されました。
@小規模個人再生 … 負債総額が多額でない個人債務者が、通常の再生手続よりも少ない費用と簡易な手続きで経済生活の再生を図っていくための手続きです。
A給与所得者等再生 … @の特別として、給与等の安定した収入のある個人債務者が、再生計画案に対する債権者の決議を得ずに再生を図るための手続きです。
なお、住宅ローンを抱えた債務者が住宅を手放さずに再生を図るために、 「住宅資金貸付債権に関する特則」も設けられました。この特則は、個人が通常の再生手続を利用する場合でも、小規模個人再生や給与所得者再生を利用する場合でも利用可能です。
■監督委員選任の原則化
再生手続には、法定の必ず設置しなければならない機関はありません。したがって、理論的には第三者による監督も管理もない完全DI P型の手続きが基本型となり、再生債務者は自ら経営を継続しながら再建を図ることができます。届出のあった債権の調査は債務者自身が行い、認否書を作成します。その後財産の評定・再生計画案の作成といった手続き追行はいずれも再生債務者が行うことになります(実際には、申立代理人の弁護士が行います)。そして、債権者集会において再生計画案の決議を行い、可決されると裁判所が認可決定を出します。裁判所の認可が確定すると、再生債務者は再生計画を遂行することになります。
しかし現実には、何の監督機関もないままに再生債務者に再生手続を進行させたのでは、手続きの公正さにおいて信頼を得られない恐れがあります。そこで、再生手続の実際の運用においては、監督委員を選任する監督型が原則になっています。監督委員は、債務者の一定の行為に同意を与える権限があり(法54条2項)、債務者の業務および財産状況の報告を求め、債務者の帳簿・書類等を検査することができます(法59条)。裁判所は、必要があると認めるときは、再生債務者に対して監督委員への報告を要する行為を指定することができます(規則22条1項)。また、監督委員は、裁判所から特定の行為につき否認権を行使する権限を与えられることがあります(法56条1項)。さらに、再生債務者による再生計画の履行を確実にするため� �認可決定の確定後も原則として3年間は監督委員による監督が継続されることとなります(186条2項、188条2項)。
■管理命令について
管財人が選任される管理命令は、万一再生債務者が適正な手続きを遂行しない場合に備えて、いわば伝家の宝刀として予定されているものです(法64条)。ただし、民事再生法は会社更生法と異なり、債務者自身による事業再建が原則であるため、管理型は例外的な扱いと位置付けられており、実際に管財人が選任されたケースはごく例外的なものにとどまります。
しかし、管理命令が例外的だからといって、再生手続において経営者の交代が全くないわけではありません。現実に、再生手続の申し立て直前や直後の時点で、再生債務者側から自発的に経営者を交代した事例が起きています。事業再建をめざす再生債務者にとって、債権者の協力は不可欠なため、経営者の交代によって協力が得られるような場合は、自発的な経営者の交代が必要となるものと考えられます。
■再生手続の推進役
再生手続では、債務者が破産状態に陥る前に事業の再生を図るため、自主的に再生計画を立案し、再生債権者の法定数の同意を得て再生計画を実行して企業の再建を図ることを原則としています。再生手続の推進役は、裁判所でも監督委員でもありません。企業を再生するための対策を立て、それを遂行し、債権者の理解と同意を得ていくのは再生債務者です。事実上は、再生債務者の代理人となる弁護士が、債権の認否を行ったり再生計画案を立案するなど事実上手続きを代行することになるため、その役割と責任は極めて大きいものになります。再生債務者の代理人となる弁護士の力量で、再生手続の成否が決まる場合があると言っても言い過ぎではありません。
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